成熟した日本社会において、これからは予防的歯科処置・定期検診（メインテナンス）がとても大切な時代になってくると思います。

日本では長らく「歯に何か問題が起こってから歯科医院に行く」といった歯科治療が通例でした。しかし実は、それによって「歯を失う負のスパイラル」に陥っていると言わざるを得ません。

小さな虫歯ならちょっと削って詰める。深く進んでいたら、神経まで取って被せものを入れる。歯がダメになったら歯を抜いてブリッジや入れ歯を入れる。こうした歯科治療を繰り返してきました。治療した詰め物も人工物であり、接着剤の劣化もあり、残念ながら一生持つものではありません。人工的な修復物は平均すると10年もたないという研究データもあります。治療をすれば一生大丈夫というわけではないのです。

皆様の中には、スポーツクラブに通ったり、食事に気を使ったり、健康食品やサプリメントを摂取したりされている方も多いと思います。ダイエットに励んだり、実費で人間ドックを定期的に受けたりして体のメインテナンスをなさっていらっしゃいます。健康は人生において最も大切なものの一つです。

しかしながら歯科においては、特に症状もないのにお口の中のことを気にかけることはそれほど多くないと思います。膵臓は「沈黙の臓器」といわれていますが、お口も沈黙の臓器といっても過言ではありません。生命には直接結び付きにくいですが、虫歯も歯周病もなかなか症状が出にくいものです。逆に言えば「症状が出た時にはかなり進行した状態」と思っていただいてよいでしょう。「失って初めて気づく大切さ」とはまさしく歯に当てはまるものだと思います。

成人の8割は歯周病

成人の方の8割は歯周病といわれています。歯周病は慢性疾患であり、コントロールはできても完全な治癒は難しく、口腔内のクリーニングにより一時的によくなっても、定期的にメインテナンスをしていかなければ再び歯周病になってしまうのです。

歯周病と全身との関連性

歯周病は、心臓血管疾患・糖尿病・リウマチ・腎疾患・骨粗鬆症などの全身疾患や早産と関係があることがわかっています。さらに、日本人の死因3大疾患である肺炎の中で、誤嚥性（ごえんせい）肺炎はその70％を占めるといわれます。高齢者は反射機能の低下により肺へ異物が入り込みやすくなります。そのためにも口腔清掃状態をきれいに保っておく必要があり、入れ歯もきちんとメンテナンスをしておくことが大切です。そう考えると、たかがお口の中の汚れと思われるかもしれませんが、実は生命の維持に大きく関わっているものなのです。

定期的なクリーニング

歯科医院に定期的に通って口腔内を徹底的に清掃し、爽快感を感じられるだけではなく、更には全身疾患の予防にもつながっているのだと間接的にでも感じていただければ、今までよりも歯科医院に向かう足も軽くなるのではないでしょうか？

働き盛りの方にとっては、なかなか時間も取れず、歯に目が向かないかもしれませんし、ただの予防処置・定期検診と思われるかもしれませんが、その小さな積み重ねが後の大きな財産につながってきます。

当院は、そんな皆様にとって身近で通いやすい歯科医院でありたいと思っています。お気軽にご相談ください。